広告業界、広告代理店への就職・転職の際に、よく質問される子会社や関連会社への就職の実態。
採用サイトでは正直よくわからないし、採用担当は自社をPRすることが仕事であり、基本的にいいことしか説明してくれません。
たとえば、全社員の中で1人しか実績がないことを、いかにもよくあることのように大々的にアピールすることもあるでしょう。
「実際、年収ってどれくらい違いがあるの?」
「入社後に会社間での異動はあるの?」
という、質問を私自身もされることが多いです。
今回は私の実体験や友人、知人へのヒアリングした内容を元に、広告代理店の子会社の実態を紹介していきます。
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目次
広告会社の子会社転職はおすすめできるか?
最初に結論ですが、私は子会社への就職、転職は全くオススメしません。
大手広告代理店の子会社・関連会社に所属する人が知人・友人が何人かいますが、仕事内容・待遇面に満足している人はほとんどいないのが実情です。
そもそも子会社に限らず、私は給与面以外でも大企業転職はメリットがあると思っています。
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子会社の年収の実態とは?
まず、圧倒的に違うのは年収です。
そもそも賃金テーブルが違います。
たとえば国内系大手の電通・博報堂であれば、部長などの役職者にならなくても普通に30代~40代で1200万~1500万くらいは稼げると言われています。
この2社のすごいところはなんといっても、出世とは無縁のヒラ社員でも年収1000万円オーバーはほぼ確実だというところです。
実力主義が多少採用されているとはいえ、基本的には旧来型の大手広告代理店は年功序列の賃金形態を採用しています。
一方で、子会社・関連会社では役職者は別として、ヒラの一般社員で1000万円に到達するのはかなり難しいでしょう。
子会社・関連会社の数や種類も桁違いに多いので一概には言えませんが、おそらく500万~800万くらいではないでしょうか。
同じ仕事をしても給与が違う
さらに、たいていの大手の子会社には本体からの出向者がいます。
産業全体のデジタル化の流れを受けて、肝いりで立ち上がった電通デジタルや博報堂DYデジタルなどでは、特に本社からの出向者を数多く受け入れています。
そこには、 同一賃金同一労働とは程遠い世界が広がっています。
本体から出向して来ている社員、元々その会社にいた社員(複数の広告会社が吸収合併される形で設立した場合)、新たに採用された社員で、同じ仕事をしても給料が全然違うということはざらです。
元々、その会社にいた社員の部下が、本体からの出向組だった場合、部下の方が給料高いということも平気で起こります。
子会社から親会社への転籍の可能性は?
たまに、子会社に入社してどこかのタイミングで親会社に転籍したい・・・とう方もいますが、基本的にないと思っていた方がいいでしょう。
水は高いところから、下にしか流れないように、本体から転籍してくることはあっても、子会社から本体へ転籍することはほぼありません。
また、基本的に親会社から来る社員は出向という形で来ることが多いです。
つまり本籍は親会社にあるので親会社の給与テーブルのまま来ています。
また、子会社の人が親会社のチームに出向・異動してくるということはざらにあります。
ただし、転籍ではないので、本体の人と同じように働いているのに、給与テーブルは自分の本籍のある子会社のまま。
こういったねじれ現象は頻繁に起きています。
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博報堂、大広、読売広告社の年収は?
今や同じホールディングスとなり外部的にみると同じ会社になったように見える博報堂DYホールディングスも触れておきましょう。
・博報堂
・博報堂DYメディアパートナーズ
・大広
・読売広告社
この四社はそれぞれ独立した企業であり、対外的には並列の存在となっています。
つまり、この四社は、親会社と子会社の関係ではありません。
ただし、年収水準は大きく異なります。
みなさんが想像される通り、最も高いのが博報堂です。
給与テーブル含めた人事制度が、合併前のままそれぞれの企業ごとに独立性を保っているためです。
そのため、明確に給与の違いは存在しています。
基本的には業務もバラバラに行われているので(オフィスも基本的には違います)、普段は交わることが少ないですが、たまに同じプロジェクトに別会社の人同士が居合わせることがあります。
そうなると、大広・読売広告社の部長より、博報堂のヒラ社員の方が給料が上ということも十分ありえるわけです。
こうなってくると、大広・読売広告社の人にとっては面白いはずがありません。
どこの会社とは言いませんが、年収格差について飲み会のたびに愚痴る友人が私にはいます。
そして、当然ながら、この会社間の異動はほとんどありえません(何人かに聞きましたが聞いたことがないそうです)
ちなみに、博報堂DYメディアパートナーズは若干特殊とのこと。
博報堂DYメディアパートナーズはそもそも博報堂、大広、読売広告社のメディア部門だけが、融合してできあがった会社です。
そのため、三社の出自の違う社員たちが一同に会しており、さらには中途・新卒で新たな人材が博報堂DYメディアパートナーズに入ってきます。
結論からいえば、博報堂と博報堂DYメディアパートナーズは対等関係にあるらしく、新卒入社の人間は博報堂と同一の賃金テーブルで働いているようです。
一方で、元大広、元読売広告社の人たちは数年単位で給与テーブルが博報堂と同水準まで引き上げられていると聞きました。
メディア部門にいたことで、給与面においては明暗が別れた形になっているようです。
親会社と子会社の社員同士の関係の実態は?
広告代理店では、親会社、子会社の社員で協力しあい一つのチームで仕事に当たることはよくあります。
ただ、実際は、一緒に仕事をしていても、親会社と子会社の関係性は、元請け・下請けのような目に見えない序列関係が明確に存在しているといえます。
少なくとも私が在籍していたとき、そういう空気はどのプロジェクトでもありました。
お互い言葉にはしないですが、お互いの年収水準もなんとなくわかっており、それが無意識の序列関係を生みます。
中には横柄な人もいるので、わかりやすく、下請け的な扱いをする人がいるのも事実です。
子会社に就職・転職するなら覚悟を持って
子会社勤務で親会社勤務の人より充実している人、やりがいを感じている人もたくさんいるでしょう。
でも、私が自分の目で実際に見てきた実態として、子会社に所属していることにより、自尊心を削られる機会が非常に多いのは事実です。
想像してみてください。
自分より仕事ができないペーペーの人間が自分より遥かに高い年収をもらっており、そして、これからどう努力しても、今後自分の方が給料が高くなることはないだろう、という事実。
これが毎日続くのです。
卑屈になったり、飲み会のたびに愚痴ったりする気持ちもわかります。
変な劣等感を感じてしまう人が多いのは事実です。
子会社在籍で転職を考えている人へ
私は転職組なので思うのですが「入る会社を間違えたと思うなら、辞めた方がいい」と思っています。
いろんな業界・会社を見てきて明確な事実があります。
年収は”自分の能力”では決まらない
それは、個人の能力よりも所属する業界・企業の方が、自分の年収に与える影響は圧倒的に大きい、ということです。
私の年収が300万円台のときは、もっともらっている友人に対して卑屈になったことがあります。
だからその気持もわかるのですが、「自分が劣っている」と意味のない劣等感に精神が蝕まれる前に、本当に年収を上げたいなら冷静に業界・企業を分析して自分がとるべき行動を見極めるべきです。
また、厳しいことを言うようですが、正直「入る会社を間違えた・・・」とただ嘆いて行動をとらない人は、実際のところは他のところに行っても通用しないことを自分も気づいており、なんだかんだ文句を言いながら現状維持しようとしているだけだな、と思う人も多いです。
自分の”市場価値”っていくらか答えられますか?
転職経験のない友人から、どうやったら転職して給与アップできるのか?という相談をよく受けます。
私も自分なりに戦略的にキャリアアップをしてきた一定の自負があるので、伝えたいことがいっぱいあるのですが、一つだけアドバイスをしてほしいと問われたら、「とりあえず行動すること」と答えるでしょう。
ここで言う「行動する」とは、情報収集を開始すること。
すなわち、転職市場の環境や自分の市場価値について客観的に評価される場を持つことです。
自分の市場価値を知ろう
転職エージェントに行って話を聞いてくるのがベストだと思いますが、
まずは下記のようなサービスを使って簡易的に、情報を集めることをおすすめしています。
ミイダスは「無料市場価値診断サービス」です。
転職エージェント大手のパーソルが運営しているので、安心です。
この手のサービスには「精度が悪い」などの批判がつきものですが、私からすればそれはナンセンス。
そんなことは当然で、実際に自分のことを口頭で伝えてもいないのに、市場価値を正確に測ることなどできません。
では、なぜオススメするのか?というと、その”早さ”です。
だいたい5分~10分位でざっくり自分の市場価値の相場をおさえることができます。
また同時に、どのような企業の求人があるのか、すなわち市場で求められているのはどんなキャリアかといった傾向も簡易的に掴むことができます。
その次のステップとして、具体的な転職活動に入っていけばいいのです。
電通・博報堂の本体に転職するには?
これまでお伝えしてきたとおり、私は広告業界の大手の子会社に就職・転職することを全くオススメしていません。
本体を目指した方がいいでしょう。
本体に入れないのであれば、入るための実績・能力を身につけることに注力することをおすすめします。
こちらの記事に、電通・博報堂に転職する戦略について詳細を記載ています。
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電通・博報堂への転職|年収1000万円超の正社員転職の難易度とは?
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親会社ではできない、子会社の専門性の高いことがやりたいんだという方もいるでしょうが、それは本当にその子会社でしかできないことなのか、を真剣に考えた方がいいです。
私の経験値から言うと、そんな仕事はほとんどなく実際は系列外の独立系の会社に勤めた方が本当の意味での専門性も実力もつき、市場価値が高くなるというケースが多いと思っています。
基本的に子会社は本体から仕事が来ることが多いはずです。
つまり、市場の厳しい競争環境にさらされていないことが多いです。
競争によって品質・サービスレベルが向上するという経済の基本原理から見ても、子会社の実力・サービスレベルが高い水準になりづらいことは明白です。
実際、競争にさらされていないことによる、失敗しても取引が切られることはないという子会社の怠慢さを感じる低いクオリティの仕事に遭遇したことが過去に何度かあります。
この業界にいる人であればみな同じような経験があると思います。
さいごに
いつもながらですが、私は自分が思ってることを素直に書いていますが、所詮一意見に過ぎないのも事実です。
同業界に身を置く別の人が見たら、全く別の景色が見えることもあるでしょう。
是非、私の意見も一意見として参考にして頂きつつ、他にも広く情報収集に努め、自分自身が納得できる意思決定の一助になれば幸いです。
(おわり)