前回の記事 では、中古車売却のコツ【前編】として、査定前にいかにどんな事前準備をすることが、高価買取につながるかを整理しました。
今回の記事は【後編】の、査定当日・交渉フェーズでのコツのまとめとなります。
実際に私がエクストレイルを売却した際に実施したことをまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
査定当日の3つの心構え
さて、いよいよ査定当日のコツになりますが、細かい交渉の話に入る前に、押さえておいた方がいい基本的なスタンス・心構えについてです。
下記の3点を肝に銘じておきましょう。
【1】誠実かつ丁寧な対応
前回の記事 でも紹介した、「洗車」「車の清掃」と同じ理由です。
買取業者側からしても、初対面の相手から高額な商品を買い取るので、当然取引相手が信用できる人間かどうかを見ています。
あとで何かトラブルが発生した場合、困るのは自分です。
最低限の身だしなみを整えておくのは当然として、言葉遣いや態度など相手に対して好印象を残しておくことは、最終的な価格交渉の際にアドバンテージにもなります。
取引相手として「誠実な人間性を示すこと」は重要だということを心得ておくとよいでしょう。
【2】自分から”金額”を言わない
営業マンからのよくある質問として、
いくら位でお考えですか?
他社さんはいくらで出されてますか?
ということを聞いてきますが、自分からは金額を言わないように注意しましょう。
事前に調べた相場金額
事前に相場を調べておいて、「その相場以下では買わないと事前に伝えるべき」と言う人もいますが、それは絶対止めた方が良いというのが私の意見です。
よほど目利きに自信が無い限り、マイナスに働いてしまう可能性があります。
実査に車を売却した経験からいうと、各社によって買取価格は大きく異なります。
「その相場以下で買わない」という宣言は、「その相場より少しでも高かったら買うよ」と言っているのとほぼイコールです。
仮に、自分で調べた“相場”が、実際の売却可能性価格より低かったとしても、営業マンたちはこぞって相場より少し高い金額を提示してくるでしょう。
“自分で調べた相場”を参照点にされるよりも、営業マンに競争してもらって出してもらった“最高値”を基準にして各社に競争をしてもらった方が絶対によいと思います。
査定相場は、相手に伝えるものではなく、自分の中の“撤退基準”として持っておくべきものだと思います。
他社からの見積提示額
これも業者から見積り金額を提示させるまで、自分から言わないようにしましょう。
理由は同じで、「他社よりも少し高い金額」を出してこられてしまうと高い金額が期待できません。
「○○円より上ですか?下ですか?」など、できるだけ情報を得ようとしてきますが、それぞれの買取業者の一巡目は、ノーヒントでそれぞれの限界まで出させるのが得策です。
【3】いきなり即決はしない
これも非常に、重要です。
各社は競争させられていることを当然意識していますので、競合を排除しようとしてきます。
最もよくある手段が「他社を断り、今この場で決めてくれるなら○○円を出しますよ」というものです。
短期決戦であれば、今決めようが、明日決めようが、提示された金額は、ほぼ確実に再度引き出せますので、このタイミングで即決するメリットはありません。
それよりも、できるだけ多くの企業から見積もりをもらい、まずは競争原理を適切に働かせることの方が重要です。
即決をどうやって断ったらいいのか?
いろんな断り方があるかと思いますが、私の場合は下記の2点を強調しています。
相場がわからないので、他社の意見も聞いた上で総合的に判断したい
わざわざ時間を割いて査定予約をしているので、今断るような不義理なことをできない
必要な情報が揃っていない状況では合理的な判断ができないという論理と、人として不誠実なことはできないという感情の2つを使うことで、断りつつ抜け目がなさそうな人間、筋が通った人間であるということを印象づけようという作戦です。
交渉開始時に伝えること
いよいよここから具体的な交渉に入っていきます。
査定の後に交渉が始まるわけではなく、査定開始というか出会った瞬間から戦闘開始ですので、主導権を握られないようにうまいことこちらのペースに持っていきましょう。
確実に売る
条件が合えば「確実に売る」ということを断言しましょう。
なんとなく見積もりをとっているのではなく、売るつもりがあることを明確に伝えることで、営業マンを本気にさせることが重要です。
もちろん、「条件が合えば」ということを、伝えるのを忘れずに。
何がなんでも売りたいという状態だと、足元を見られたり、「今すぐに手放したい、何か不都合がこの車にあるのでは?」と勘ぐられてしまってもいいことはありません。
複数社に査定依頼している
複数社に見積もり・査定依頼していることをまず伝えましょう。
競争原理を働かせることは、金額交渉における最重要項目です。
そうではないと「ただ売却を焦っているだけ」だと思われた場合、最高値を引き出すことは難しいです。
短期決戦で決める
直近決めるつもりがあるということを伝えることも効果的です。
そのためにも 前回の記事 で触れたように、同日に査定をまとめて入れることが重要となります。
営業マンとしては、時間は惜しいので、すぐ決めてくれるならば多少利幅少なくなっても、手間を考えればメリットがあります。
また、「ここで勝負にいかないと、他社に取られてしまってもう帰ってこない」と思ってもらうことにより最高値を引き出しやすくなります。
最高値をつけた会社に売る
また「一番高く買ってくれるところに売る」ということをしっかり伝えましょう。
実はこれは重要で、営業マンはできるだけ自社で安く買い取りたいため、あの手この手を使って競合を蹴落としつつ値段を下げようとしてきます。
たとえば、
「他社では買い取ったあとの検査で不具合が見つかって値段を下げられることもあったりすると聞いているので、信用のできる大手で買った方がいいですよ」
とか、
「売却あとでトラブルにならないように、保険(クレームガード保証)をつけられる当社で売った方が最終的にお得ですよ」
など言ってきます。
個人的には私はそういった保険は不要だと考えていますが、仮に保険に入るとしても、それは最終的にその会社に決めるまで絶対に言わない方がいいです。
そこに迷いがあると察知された時点で、最高値を引き出しにくくなります。
「おっしゃることはわかりますが、色々こちらでも調べてあって、一番高く買ってもらえるところに売ると決めています」とビシッということが重要です。
査定の一周目が終わってからが本番です
各社から、一回目の見積価格が出揃いました。
さてこのタイミングで思ったより、よい査定価格を提示されたり、この場で決めていただけたらあと○○万円乗せます、なんて言われたりしてしまうとついついもう決めてしまいたくなる気持ちもわかりますが、一回目の見積もりはまだ決断するタイミングではありません。
一回目の見積は本気ではない?
大前提として、営業マンは必ず「もっと高く買い取れる」余力を残しているということを肝に命じておきましょう。
交渉テクニックとして「最初から限界の価格で出します」と言ってくる人もいるかもしれませんが、それは嘘と思った方がいいです。
売主側は「できるだけ高く買い取る」ことを考えていますが、買取業者としては「できるだけ安く買い取る」ことを考えているので、いきなり限界値を出してくることは、まずないと言ってよいでしょう。
彼らの最大の交渉の武器は、「追加で○○万円上乗せ」することにより、決断を迫ることです。
交渉カードを残しておくためにも、絶対に余力を持っています。
その余力をいかに引き出すかという戦いが「最終価格交渉」です。
価格提示2回目のポイント
さて、それを踏まえた上で、2回目の価格提示です。
一周目に提示された見積もりの“最高値”を使って、各社との価格交渉に突入です。
ここでは3つの注意点をあげておきます。
必ず一社ずつ交渉する
たとえば、一周目の査定の最高値が100万円だったとして、「他社の提示金額は100万円でした。それを超える価格は出せますか?」と、一斉に各社に聞いてしまってはダメです。
基本的に低い価格を提示してきた会社から、一社ずつ確認していきます。
その会社が再提案で105万円と提示したら、今度は次の会社に「他社の提示金額は105万円で出して来ていますが、それを超える価格は出せますか?」と聞いて価格を上げていきます。
このタイミング位から、相場もある程度掴んできていると思いますので、この時相手に引かれない(交渉を辞めたいと思われない)範囲で、実際に提示されている金額より少し高めの金額を出すこともあり得ます。
まだ即決はしない
当然、営業マンも、他社にも同じような交渉をしかけていることはわかるので、当然それを防ぎにやってきます。
それが、「今即決してくれるなら、○○円で買いますよ」という切り札カードです。
でも、ここでは、まだぐっと堪えましょう。
まだ最高値を引き出せる可能性があるからです。
「前向きに考えたいが、他社から最終的に決める前に絶対連絡してほしいと言われている。そちらの方が高い金額を提示してもらえるかもしれないし、不義理はできない」
とでも答えておきましょう。
早く回答をもらえるようにする
買取業者からの視点からすると、即答で「高い金額」を出すと、どんどん買取金額を上げられてしまうかもしれないですし、まだまだ余力があると思われないようにするために、「上司に確認をとります」と時間を掛けてきます。
ダラダラとした交渉は買い手側のペースなので、価格を貰う前に「○時頃までに回答もらえますか?他社さんからも決断迫られているので、長く待てないかもしれない」と時間を切ってこちらのペースに持ち込みましょう。
いよいよ最終交渉フェーズ
ここまでの段階で、「最高値」を提示してきた一社は残っています。
最後は、最高値を提示してきた一社から「さらによい価格を引き出す」コツを紹介します。
「最高値」を出してきている会社に対して、3つのアプローチをかけ合わせてさらなる高値を狙っていきます。
最終交渉のポイント
【1】あなたから買いたい
繰り返しますが、相手も人間ですので、信頼してくれた人間には応えたくなるものです。
今日接してくれた中であなたが最も誠実な対応をしてくれたなど、金額ではなく相手の人間性を理由に買いたいことを伝えましょう。
情に訴える作戦です。
この時に「情に訴える」効果を最大化するために、最初にお伝えしたように一貫して「誠実かつ丁寧な対応」をすることが重要です。
また後述もしますが、「あなたから買いたい」という価格以外の購入理由をここで一旦提示しておくことは、交渉の上でのメリットもあります。
【2】他の企業の方が高い見積が出ている
競争原理が、最高値を引き出すのが原理原則です。
あなたから買いたいんですが、他の企業の方が高い見積が出ているので、なんとかできませんか?という交渉です。
【3】「即決する」ことを伝える。
ここでついに、こちらから「即決」カードを切ります。
「即決」は非常に強力な武器ですので、相手に切らせずにこちらから使いましょう。
相手にもこれが最終決戦だと伝えるのです。
相手も明確なゴールが見えているので、こちらの要求に応じてもらいやすくなります。
②でも、他はもっと高い!
③これで決めるからなんとかしてくれませんか?
という3段構えの畳み掛け作戦です
相手の限界が来ていた場合はどうする?
最高値を出している会社に、さらなる価格交渉を仕掛けることになりますので、相手が「もうどうしてもこれ以上は出せない」と言ってくることがありえます。
ここからは相手との心理戦。
相手の様子を伺いながらの交渉になるので、ケースバイケースでなんとも言えませんが、「ダメ元でいいから、もう一度検討してもらえませんか?」と告げて電話を切るのが正攻法だと思います。
少し待てば相手から「あのあと上司に相談して○○万円まで提示できます」と言われる可能性もありますし、仮にそれがなかったとしても最初に「あなたから買いたいんだ」と伝えてあるので、「他社さんの方が高かったけど営業マンの態度が気に入らなかったので、やっぱりあなたから買いたい」とこちらから再度は話を持ちかけたとしても、話の筋は通っているので納得感はありますし、現状の最高値で購入することが可能です。
私の交渉の結果
私は上記の方法を駆使して最低提示価格の88万円に対して、140万円という50万円以上の価格での売却をすることができました。
最終査定価格
A社・・・140万円
B社・・・138万円
C社・・・130万円
D社・・・125万円
E社・・・88万円
この140万円という価格は、私が事前に調べていた相場価格より高い金額でしたので、非常に満足しています。
詳細は企業名と金額付きでこちらでまとめていますので、ご確認ください。
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まとめ
【前編】と【後編】の2回にわけてまとめた中古車売却のコツは以上となりますが、実際の見積もり提示額の詳細をまとめた実録レポート、情報収集をしていた際に集めた他の人たちの査定のリアルをまとめた記事もありますので、ぜひそちらも合わせてご覧ください。
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おわりに
中古車売却の交渉はいわば営業マンとの智略戦です。
「安く買いたい」側と「高く売りたい」側の対決。
当然、営業マンの力量によって交渉がうまくいくこともあれば、逆に「こちらは上手くやった」と思っても実は営業マンにしてやられていたということもあるでしょう。
これまで説明してきたような話は全て営業マンに読まれている可能性もあります。
交渉術・テクニックはその場の状況に何が正解かは大きく変わりますが、少なくとも何も準備をせずに臨むのとある程度準備してから交渉に臨むのでは結果は大きく変わると思います。
今回は、机上の空論ではなく私が考え、実際に実行した一例です。
是非、参考にしていただき、営業マンとの智略戦に勝利して頂ければと思います。
(おわり)